プリスカはアルフレイム大陸の北東部、ウルスラ地方東端に位置する小規模の円村において、村長の次男として生まれた。
　村は酪農などで安定した収益を持っていて、それなりに裕福だった。とはいえ、北部ゆえ奈落の魔域が多い地域柄や、蛮族が跋扈するゴーント地方に近いこともあって、村は排他的だ。村人は全員が人間で、関係のない者は商人ぐらいしか立ち入ることもなかった。
　そんな村でナイトメアとして生まれたプリスカが幸運だったのは、両親と産婆が憐れみ深く優しかったことだ（また、既に長男がいたことも幸運だった）。ナイトメアの赤子は、亡き母と同じ「プリスカ」という女性名をつけられて、表向きは病弱な長女として育てられた。
　彼に与えられたのは、小さいが狭くはない小屋に閉じ込められて、紡錘でぐるぐる糸を紡ぐ毎日だった。

転機が訪れたのは8歳ごろだ。ある日、プリスカは自分が指先からほつれた糸を出せることに気がついた。その糸はあまり重いものは吊るせないが、小さな紡錘であればなんとか吊るして、操ることができた。これはダークハンターが使う操気によく似たもので――当然多くの体力を使うため、たくさん気絶することになったが――紡績の効率は著しく向上した。
　もちろん、病弱な少女がやたらたくさん糸を紡いでいるという噂はすぐに村中、どころか商人たちにも広がった。父親は近隣の村の長老を呼んで、その技を探ったが、伝説で囁かれる以上のことは分からなかった。

悪しき魔神と契約したのではないか、と村人たちが噂し始めた頃、村に怪しげな冒険者がやってきた。彼女こそ、その後プリスカの師匠となるダークハンターである。
　父親との面会の後、冒険者の女性はプリスカの住む小屋を訪れた。女性はプリスカが少女ではなく少年であったことに落胆したが、その才能から弟子になることを許してくれた。

こうして、プリスカはダークハンターの弟子となった。ひっそりと出ていく形で故郷を離れ、旅の中で技術を磨き、一介の冒険者となったのである。


師匠から独り立ちした後も、プリスカは順調に依頼をこなしていた。しかし、（死と隣り合わせとはいえ）安定した簡単な依頼を続けていると、一人で自分を迎えに来た師匠の凄さが身に染みてくる。
　粗暴で、大酒飲みで、女好きすぎる師匠ではあった。だが、弱きを助け、強きに靡かず、誰とでも対等に接する姿は、まさに冒険者の鑑だった。

ミュラー氏の布告を知ったプリスカが、その偉大なる開拓船に乗り込むことを決意したのは、それと無関係ではない。
　多くの冒険者が集まる未開地で彼らを支え、そして支えられること。それは、プリスカにとって最も冒険者的であり――師匠のような、｜先導者《パスファインダー》たる姿だと思ったからなのだ。


得意技は、〈スーパー・オクト・スピンドル〉（師匠命名）。両手両足で操気を使い、最大８個の紡錘を同時に使って糸を紡ぐ。めちゃくちゃ疲れるわりに、効率は糸車以下なので、滅多にやらない。

========================
・経歴（基本Ⅰ:p54~55）
B-2-3：田舎で育った
A-6-5：血縁者と死別したことがある
B-5-4：役に立たない得意技がある
・冒険に出た理由（基本Ⅰ:p55）
3-2：身分を隠すため
========================
・信条（CBB:p62/OPB:p102）
25-26：希望（夢、絶望）
61-62：友情（連帯、孤独）
・矜持/執着（CBB:p62/OPB:p102）
45-46：弱者を見捨てない
========================